『日本ダービー』ディープインパクトさながらの狂気の血の継承者ドゥラメンテ
 

 競馬ファンだけでなく日本中が注目する大一番――第82回日本ダービー(芝2400メートル)が今週末の日曜(31日)、東京競馬場で行われる。2012年に生産されたサラブレッド6897頭(持ち込み馬、外国産馬を含む)の頂上決戦で断然の主役は皐月賞馬ドゥラメンテ(牡・堀宣行厩舎)。異次元の鬼脚で牡馬クラシック1冠目を制した新怪物だ。その未来図には、目前の2冠どころかあのディープインパクトさえ果たせなかった“世界制覇”が描かれている。

 その昔、“狂気の血”と形容されたサンデーサイレンス。GI・6勝(米国)の競走時代もさることながら、種牡馬入りしてからが度肝を抜くパフォーマンス。その産駒が日本の競馬シーンを次々と塗り替え、近年最強の名馬ディープインパクトを世に送り出した(GI・7勝→種牡馬入り)。

 その狂気の血=サンデーサイレンスを母の父に持つドゥラメンテが今年10月4日、フランスのロンシャン競馬場で行われる世界最高峰レース、GI凱旋門賞(芝2400メートル)の登録を完了。ディープインパクトですら果たせなかった日本の夢。圧倒的強さで皐月賞を制したドゥラメンテが世界ナンバーワンの座に照準を定めた。

 馬名の由来は「荒々しく」。ディープインパクトも端正な顔立ちとは裏腹に荒々しい気性の持ち主だったのは有名な話。道中、ひっかかり通しで3冠を達成した菊花賞の危なっかしいシーンは今でも語り草だ。

 それでも一旦加速したら飛ぶような走りを見せるのはサンデーサイレンス産駒の特徴。その最高傑作は国内で走った13戦すべてで最速上がりをマークした。コース、展開、馬場を問わず、ダントツの瞬発力を繰り出してきたのはまさに“狂気の血”のなせるわざ。今年のダービーで断然の1番人気濃厚のドゥラメンテも全5戦で上がり最速をマーク。ディープインパクトさながらの“狂気の血”の継承馬である。

「これまで一度もまともな競馬をしていないのでは…。比較的スムーズに運んだように映るセントポーリア賞(500万下)ですら、口向きの悪さを見せていましたから」と担当の橋本助手が苦笑交じりに語るように、出遅れやひっかかるのは当たり前。前走の皐月賞では4コーナーで急激に外へヨレて立て直すロス。それでも次位を0秒6も上回るダントツの上がり(33秒9)をマークして差し切ったのは驚きの一語。2~5着が先行、好位勢だったことを踏まえれば、後続につけた1馬身半差以上の中身の濃さ。もはや現世代では敵なし。それを如実に示すクラシック第1弾だった。

 中間も至って順調。1週前追い切り(21日=南ウッド5ハロン70・5―39・5―12・6秒)も躍動感のある動きを披露した。

「ややテンションは高めだけど、裏を返せば元気のある証拠。やりだせばすぐに仕上がるし、長い距離でも大丈夫。タフな流れになればチャンスは大きいでしょう」(同助手)

 皐月賞では控えめだった陣営だが、今回は一転しての強気節。それもそのはず、皐月賞では2着馬に2馬身半差だったディープインパクトが5馬身差圧勝を決めたのがダービー。音速の脚を持つ者にとって東京以上のベストコースもまた存在しない。好天に恵まれれば、凱旋門賞へと続くビクトリーロードを疾走することは間違いないだろう。

最終更新:5月26日(火)21時14分

 

『日本ダービー』ミュゼスルタン『NHKマイルC』3着から不気味参戦理由

 

【日本ダービー(31日=日曜、東京芝2400メートル)聞かせて!!核心:美浦】皐月賞やダービートライアルではない“第3の組”NHKマイルCから参戦する3着馬ミュゼスルタン。前走後はすぐに次走が決まらず、その動向に注目が集まったが、オーナーと協議した結果、日本ダービー出走が決定した。管理する大江原哲調教師(62)に参戦の経緯と手応えのほどを聞いた。

 ――ダービー参戦を決断した理由は

 大江原:当初は安田記念を使うプランもあったが、賞金的に厳しそう。そこで(柴田)ヨシトミに「ダービーはどうだ」と聞いたところ、いい返事がもらえた。ジョッキーの感触が良かったことが一番の理由かな。

 ――前走を振り返って

 大江原:結果は残念だったが、内容的には悲観していない。先行馬同士の決着だったし、内有利の馬場を外からいい脚で伸びてきたからね。特に坂を上がってからの脚には目を見張るものがあった。負けて強しだったんじゃないかな。

 ――中間の気配は

 大江原:すこぶる順調。長期休養明けだったスプリングS(7着)後はちょっと疲れが見られたけど、1度使って体のこなしが良くなったからか、今回はダメージが少なかったんだ。これもダービー出走を決めた理由のひとつと言える。22日に馬なりで初時計(南ウッド5ハロン70・3―13・1秒)を出したが、いい雰囲気だったよ。これで当週、併せ馬をすればちょうどいいだろう。

 ――レースへ向けて

 大江原:正直、距離に関してはやってみないと分からないというのが本音。ただ稽古では落ち着きが出て、以前より折り合いがつくようになっている。ダービーはあまりスローな展開にならないレース。案外、競馬はしやすいかもしれない。とはいえ皐月賞組を中心にメンバーは強いし、あれこれ考え過ぎても仕方がない。とにかくいい状態でミュゼスルタンをレースに送り出せるように頑張ります。

 

 

『日本ダービー』サトノクラウン、メリハリの利いた馬体

 

【日本ダービー(31日=日曜、東京芝2400メートル)注目馬26日朝の表情:美浦】皐月賞1番人気6着からの巻き返しを期すサトノクラウンは開門直後の坂路をリズミカルな脚さばきで登坂(4ハロン77・6秒)。その後はダート(南D)をダクで半周し、順調さをアピールした。

 1週前追い切りはややセーブした形になったが、「その分、日曜(24日)の坂路で(4ハロン56・7秒と)強めにやった」と橋本助手。

 メリハリの利いた馬体は、隙のない仕上がりを物語っている。